それは、良く晴れた日のことだった。
何時も通りに朝ご飯を食べ、何時も通りに家を出た。
日常での当たり前の行動をしていただけだった。
学生なんだから、学校へ行く。
ただそれだけだった。それ以外の何事でもない。
そんな「何時も通りの日常」は、この橋を渡ってすぐ、ぶち壊された。
scamper - act.00
人通りが激しいわけでもなく、寧ろゼロに近い橋。
古びていて、短い、ホントに短い橋。
でもこの橋を通らなければ学校へは行けないのだ。
「・・・重いっ」
肩にかける様に持っている竹刀がずり落ち、不満を漏らすように呟く。
深く溜息を吐きながら、一歩、また一歩と足を進めていく。
自主練をしたいが為に朝早くに登校するも、
最近は中々体が言うことを訊かず、今も目が霞んでいる。
「今日はやけに霧深いな・・・?」
おかしい。確かにそろそろ橋向こうに着いていてもいい筈なのに。
朝霧のせいで目の前が朧になる。
は急に不安になり、考えずとも足は速度を速めていた。
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
どの位走っただろう。流石に運動部活だとは言え、息も上がってきた頃、
やっとゴールが見えてきた。
「あー・・・部活遅れる・・・ッ?!」
橋を渡りきった。だがそこに本来ならあるはずの「学校」は無かった。
あるのは、古い、大河ドラマのセットみたいな造りの街並みと、
それに似つかない、最新型っぽいタワーみたいな建物。
道行く人は着物だったり、洋服だったり、エイリアンだったり・・・・
・・・・エイリアン?
「・・・いや、何かの間違いだよ、うん。
この頃寝てないからねー、絶対疲れ目」
瞳を瞑り、そう言い聞かせる。
違う。絶対違う。エイリアンじゃないよ。つか、エイリアンじゃないと言ってくれ・・・!
言い聞かせ、言い聞かせ、言い聞かせ・・・・
瞳を開く。
「・・・駄目、信じらんない」
そう、一言だけ。
一言だけ呟くと、は全力疾走をした。
近くにあった路地に入ると、一息吐く。
「・・・エイリアン、着物、古い街並み・・・何がどうなってんのコレ・・・・?」
街並みや雰囲気からして、自分の居た世界ではないことは明らかだった。
夢だ、と思い壁を蹴ってみても崩れることはおろか、
自分の足まで痛み出し、余計に現実を突きつけられた。
「とりあえず、誰かに此処は何処か訪ねますか・・・」
以外にも落ち着きを取り戻し、とりあえず道に出ることにし
ゆっくりと顔を出す。
ドゴォッ!!
急に何かがぶつかって来て、バランスを崩しそのまま顔面から倒れる。
べしゃっ、という怪しい音を響かせながら暫く静止するも、
勢いよく飛び起きて鼻を押さえる。
「痛・・・ッ、何すんだァッ!!」
痛さに耐え切れずに我武者羅に持ってきていた竹刀を握ると、
ぶつかって来たモノに素早い剣捌きを下す。
ぶつかって来たモノは良く見るとエイリアンで、鳩尾(?)にヒットしたらしく
気を失っていた。
パチパチパチ・・・
何処からとも無く聞こえる拍手に振り向くと、そこには2人の黒い服を纏った
青年が立っていた。
「いい戦いぶりだったぜィ、お嬢さん」
「あー、コレで早く仕事終わった・・・助かった」
「?はぁ、どうも・・・」
竹刀を未だにエイリアンに突き刺したままの状態で答える。
黒い服の・・・黒髪の男はゆっくり近づくとエイリアンの前でしゃがむ。
「・・・後始末するから下がれ、総悟・・・ってオイィイィィ!!何バズーカ構えてんだァァ!」
「何言ってるんですか土方さん。後始末なら俺に任せてくだせェ」
「任せられるかアァァ!!」
何だか叫びあう2人。
良く分からないから放って置いたら、行き成り腰にさした刀を抜いたので
慌てて止めに入る。
「え、ちょ、止めてくださいよ!何やってんすか!」
口調が可笑しくなるのも気にせずにそう言うが、双方とも軽く無視。
そろそろ叫ぶのにも飽きてきて、実力行使に出ることにした。
「そろそろ・・・止めなッ!!」
力の限り竹刀をブン投げる。
向かってくる竹刀に気付いた、色素の薄い髪の奴は
黒髪の奴の肩を掴むとそのまま盾にした。
「・・・う、うわぁ・・・」
「〜〜〜〜〜ッ」
虚しく音を立てて落ちる竹刀を横目に、顔面を手で覆う黒髪を見やる。
色素の薄いほうはというと、なんとも言えない笑みを零しながら
にや、と笑っている。
此方の視線に気付くと、無表情とも言えない表情で言う。
「お嬢さん、ナイスでさァ」
「うわぁ・・・嬉しくねぇ・・・」
そうとだけ言うと、は落ちた竹刀を拾い、黒髪に近づく。
「エート、大丈夫ですか・・・?」
「・・・あ、あぁ・・・」
そう言いながらゆっくり立ち上がる。
色素の薄いほうが「なんだ、生きてたんですかィ」なんて
愛の無い言葉をかけた後に蹴り飛ばすくらいだから、大丈夫なのだろう。
「・・・あ」
肝心なことを忘れるところだった。
エイリアンに縄を巻いている2人に駆け寄ると、声をかける。
「あの、ちょっといいですか?此処は・・・何処ですか?」
変な質問だろう。
いきなり此処は何処?などと声をかけられれば誰でも戸惑うに決まっている。
2人も例外ではなく、ゆっくりとを「頭のおかしい子」でインプットしていく。
「あー・・・お嬢さんは何処から来たんだィ?」
「東京、です」
「トウキョウ?そんな地名あったか?・・・此処は江戸だぜ?」
「江戸」───・・・確かにこの人たちはそう言った。
だが、私の知る江戸とは離れすぎている。
街並みも、エイリアンが居ることも。
「そう言えば、名前聞いてなかったな?」
黒髪はそう言うと手を休める。
「あー・・・、です」
「、ね。俺は沖田総悟。こっちのウスラマヨネーズ野郎は副長の土方歳三。
・・・まぁ、明日には違う世界へ逝ってるから、覚えなくてもいいぜィ」
「誰が逝くかァ!!何だウスラマヨネーズってェェェ!!」
「いや落ち着いてください土方さん!ちょっと!沖田さんも刀構えないで!!」
沖田、と名乗る男に蹴りかかる土方、と名乗る男をとりあえず宥める。
「・・・とにかく、詳しい話は屯所で訊く。お前の倒した天人の処理もあるからな」
「・・・は、天人?何ですかそれは?」
思わず訊きかえすと、2人はまたものすごい目付きでを凝視する。
「・・・ちょっと、2人とも今私に対してとても失礼なことを考えましたよね?」
「さァて土方さん、とりあえず屯所に連行しましょうや」
「初めて気が合うな、とりあえずコイツに話を聞かないといけねェなぁ」
「無視かい」
とにかく「頭のおかしい奴」でインプット完了したは
屯所に連行されることになった。
「(最後のほう、適当じゃないか・・・ッ!)」