朝陽がそろそろ眩しくなってきた。
眠気と戦いながらもようやく縁側まで体を引きずると、
外では、雪が舞っていた。
「もう、春なのに」
暖かな陽気の中に見えるそれは、雪が舞う、というよりは蝶が舞う、という方に近かった。
綺麗、だった。
思わず見惚れてしまうほどにひらひらと舞い上がる雪。
ずっとずっと、見続けて居たかった。
「・・・さん?」
そう声をかけられて、振り向く。
「弁慶さん、おはようございます。・・・あ、良いところに!ほら、雪が舞ってるんですよ!」
嬉しそうに弁慶のほうに駆けていく。
服の裾を引っ張りながら、外を指差す。
「まったく、困った人ですね」
クスクスと口に手を当てて笑う弁慶をよそに、
は何がおかしいのか良く分からなかった。
弁慶はやはり、楽しそうに笑いながら、外に向かって歩き出す。
空を仰ぐように手を翳せば、そこに雪がふわりと落ちる。
落ちる、というよりも、吸い込まれる、といったほうが、表現的にはいいかもしれない。
弁慶はそれを掴むと、またのほうに戻ってきた。
「よく見てください、さん。これは、雪なんかじゃありませんよ」
そう言い微笑みながら手のひらを開く。
「・・・桜の、花びら?」
「白桜、というものですか。白くて綺麗なので、見間違えたのでしょう」
はそれを綺麗、綺麗と呟きながら嬉しそうに見る。
見続けているには悪い気がしたが、手のひらをもう一度閉じて、庭のほうに向き直る。
ゆっくりと手を開くと、春風がふわっと花びらを攫って行く。
花びらは天高くまで昇り、やがて見えなくなった。
「すご、かった・・・」
まるで可笑しな光景を見たような表情を浮かべている。
微笑ましい。愛しい。その表現がぴったりだった。
「まだ春風は吹き続けますから、こういう光景も続きますね」
「じゃあ、当分はこの邸にいても飽きないね。それは良かった!」
「今の発言、朔や望美さんが聞いたら心配してしまいますよ。
・・・2人とも、さんが飽きないように頑張っているようですから」
「えぇ?!いや、そんなつもりで言ったんじゃないですよ・・・」
「からかいがいのある方は、好きですよ」
再びクスクスを笑うと、は赤面しながら呆れたように笑う。
春風はまた、花びらと戯れるように吹き荒れる。
(Cyd : 花びらの中に居る貴女も、桜の花のように映えていた。)