『私を、弟子にしてください!』



君がそう言って弟子になったのは、何時だったでしょうか。

















「弁慶さん、薬草摘み終わりました!」



「はい、ご苦労様」





あれから、そろそろ半月が経て。



呑み込みの早いさんはもう一通りの仕事を覚えてしまった。



今では立派な、私の助手である。





「これから薬の調合をしますけど、さんは見学されますか?」



「いいんですか?」



「ええ、手伝ってもらいたいですし、」



「じゃあ、見学させてください!」





笑顔を見るたびに、こちらまで笑みが零れてしまう。



なんて単純なのだろう、僕は。



この人の前では、自然的な自分まで溢れてしまう気がする。











「・・・それにしても、いつも思うんですけど、弁慶さんの部屋は凄い騒ぎですよね。



 私片付けましょうか?」





これだけは何時までたっても慣れないな、と彼女は言う。





「そうですね、片付けてもらっても構わないのですが



 さんには見られたくないものまで発掘されそうですね」



「うわ、すごく気になるんですが・・・



 というか、隠し事はずるいですよ?私の嘘はすぐにばれてしまうのに・・・」





困った様に笑う彼女は、元から整った顔立ちではあったが



いつにもまして優美を纏っていた。





さんの嘘は顔に出てしまいますからね。



 ・・・でも、そんな風に困った笑顔を見せられたら、正直に云わないと申し訳なくなって来ますね」





そう言って《薬》の文字の刻まれた戸棚から



小さな小瓶を取り出す。





「この薬の正体を知っても、弟子を辞めるなんて云わないでくださいね」





貴女は大切な存在なのですから



そう耳元でささやくとは赤面して、はい、と小さくつぶやいた。





「これは、僕の作った『媚薬』です」



「び、やく・・・?」



「ええ、でも少しだけ他のものとは違っていまして、身体能力を高めることが出来るのです。



 媚薬本来の『理性を飛ばす』働きは、副作用として起こってしまいますが・・・」





さんはその間、無言で聞き入っていた。





「弟子を辞めたい、と思いましたか?」





少し申し訳なさそうに聞く。



は首を横に振り、真っ直ぐ弁慶を見つめた。





「いいえ、その逆です。



 こんな物まで作れる技術を持った方が折角近くにいるんです。



 もっと、技術を見て盗まねばいけなくなりました!」





笑顔でそういう。



弁慶も安心したように笑い返す。





「・・・丁度良いです。それでは、手伝っていただけますか?」



「(丁度良い・・・?)はい、何をすれば?」



「この媚薬を、飲んでいただけますか?」



「は・・・い?」





驚きのあまり、気の抜けた声を出す。





「こんなことを頼んでしまって申し訳ない。貴女を利用したくはありませんでしたが・・・



 この媚薬の副作用を止める薬を開発したんです。」



「でも、もし・・・・」



「大丈夫、薬の効果は強大です。君の事は、僕が全力で守る」





それに、理性の飛んだ君を見てみたい気がする。



口先とは矛盾するように、心の中の自分は何故か愉しんでいる様だ。





「絶対、ですよ?」





不安に染まった瞳に、少しずつ光を取り戻しながらそう云う。







コク・・・・ン・・・







「は・・・ァッ・・・うぁ・・・あ・・・」





持っていた瓶を落とし、胸を押さえる。



踊り狂った蜘蛛の様に、を多い尽くす邪気。







「さて、僕のをさらいに行こうか」








紅の瓶を片手に、僕は少しずつ距離を縮めた。

























(Cyd : 黒く歪むほど 人は人の形を保てるもの)